さいたま市の2023年(令和5年)4月1日時点の保育所の待機児童が0人になったことが、2023年4月27日に公開されました。
待機児童0は2年連続となります。
公開されたデータを詳しく確認し、今までの待機児童の経緯、少子化だけど保育園を利用する割合は急増、隠れ待機児童、1歳児クラスの利用保留児童数の割合の高さ、今後のさいたま市の保育施設についてお伝えします!
さいたま市2年連続待機児童0へ
2023(令和5年)4月1日、さいたま市の待機児童が2年連続「0人」になりました。
さいたま市の直近7年間の施設数、定員数、待機児童数の推移です。
2017年(平成29年)に0人だった待機児童は、国の待機児童のカウント基準の変更もあり、2018年(平成30年)に一気に300人超えに。
3年間厳しい状況が続き、2020年(令和2年)には待機児童数全国ワースト1となってしまいました。(政令指定都市でそもそも子どもの人数が多いので、「数」はワーストでしたが「率」ではワーストというほどではありませんでした)
しかし表の青線のように施設数・定員数を急増させ、コロナ禍の保育所利用控えもあり、2021年(令和3年)は激減して11人に、そして2022年(令和4年)・2023年(令和5年)は「待機児童数0」となりました。
2017年(平成29年)は待機児童数0でしたが、その前に待機児童がいなかったわけではありません。以下、さかのぼれる範囲でさいたま市の待機児童数を表にしました(各年4月1日時点)。
年 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 |
人数 | 143 | 126 | 117 | 128 | 95 | 24 | 0 | 315 | 393 | 387 | 11 | 0 | 0 |
少子化だけど保育園を利用する割合は急増
さいたま市は8年連続ファミリー世帯の流入数がダントツ全国1位、宅地開発され大規模マンションは建ち、人口が増え続けています。
実はそれでも、急激な少子化の影響でさいたま市でも毎年未就学児の数は減り続けています。(下の表の一番上、「就学前児童数」)
令和5年はついに前年から4桁の未就学児が減っています。
じゃあなんで、さいたま市に保育園が作られ続けている?
保育園の利用申込者数がそれ以上に毎年増え続けているからです。(下の表の上から2番目、「利用申込者数」)
毎年未就学児減を上回る数で申込者が増えています。
特筆すべきはその申込率の急増ぶり。(下の表の上から3番目、「申込率」)
毎年数%ずつ上がっていき、2017年(平成29年)には30.8%だったものが、6年後の2023年(令和5年)には47.0%となっています。
下の表は令和4年に公表されたものに、令和5年分を筆者が書き加えたものです。(令和5年はこの表が公開されていないため)
出産後も働き続ける女性の割合が急増しているんでしょうね。さいたま市の場合は立地的にも、2人とも通勤しやすい場所として選ばれていそうなので、他の自治体より共働き世帯が多そうな感じはあります。
こんなに保育園に通う子どもの割合が増えると、幼稚園の経営は大変でしょうね。
「認定こども園」として、保育園機能を求める子どもを受け入れる幼稚園も毎年増えています。
さいたま市の「送迎保育ステーション」は、小規模園を卒業する子どもの受け入れ先として幼稚園を紹介する取り組みです。
隠れ待機児童はいるし希望の園に入れるわけではない
2023年2月の一次利用調整結果の時点では不承諾数が上がってしまっており、待機児童も0にならない可能性が…と思っていましたが、0になりましたね。
待機児童0人になったのはとても喜ばしいことで、さいたま市もがんばってくれているのですが、やはり「隠れ待機児童」はいるし、希望上位の園に入れるというわけでもありません。
今回の待機児童数の内訳の数字を詳しく見ていきます。
「利用申込者数(A)」「利用者数(B)」について、昨年までは新規と継続に分けて記載されていたのですが、令和5年のデータでは公表されていません。
「利用申込者数(A)」が増えた(+1,524人)分、「利用者数(B)」も増えて(+1,268人)いますが、隠れ待機児童と言える「利用保留児童数(C)」も増えて(+256人)います。
「待機児童0人」ですが、以下の「利用保留児童数(計1,584人)」はカウントに含まれていません。
- 認可園に申し込みをしたものの叶わず認可外園等を利用(189人)
- 育休中のうち復職意思を確認できない(821人)
- 求職活動を休止している(子どもを保育しながら、主に在宅で求職活動している方を含む)(133人)
- 自己都合により内定を辞退、利用可能な保育所等の情報提供を行ったものの特定の保育所等を希望(441人)
また、上の図の令和5年の内訳には記載がないのですが、「利用者数(B)」の中には「転園の希望の申込みをしたが、元の施設を継続利用する方」も含まれています。(令和4年だと426人が該当)
これらの方は「利用保留児童数(計1,584人)」に含まれていないものの、隠れ待機児童と言えるかもしれません。
以下、気になるポイントです。
D:認可園に申し込みをしたものの叶わず認可外園等を利用 | 認可園に入れる人が増えたことやナーサリールームが認可園に転換することも増えており年々減少していたが、今回また増えた(待機児童数全国ワーストだった2020年(令和2年)は460人。その後187人→118人と減少、今回189人) |
E:復職の意思を確認できない | 申込の段階で育休延長したいと届け出ている人を含んでおり、こういった延長目的の人は「隠れ待機児童」とは言えなそうだが、いろんなケースがあり仕方なく復職を断念した人もいると思われる。 |
F:求職活動を休止 | 子どもを保育しながら主に在宅で求職活動も含むということで、いろんなケースがあると思うが「保育園受からないから仕事も決まらない、だから断念」という方もいるのでは。 |
G:特定の保育所等のみ申込み等 | 「利用可能な保育所があるとは聞いたものの、実際に毎日そこに預けてから通勤することを考えると距離や立地的に辛すぎるから希望しない」「きょうだい別園になってしまうのが立地的にきつすぎる」「自分の希望とは大きくはずれた園しか空いておらずそれなら入らない」などそれぞれに理由がありそう。 |
ということで、利用保留児童計1,584人+転園の希望が叶わなかった人のうち、何人を本当の「隠れ待機児童」というべきかわかりませんが、「隠れ待機児童」はいます。
これは厚生労働省の定義によるカウントなので、さいたま市が待機児童のカウント方法をズルしているわけではありませんが・・・。
また、さいたま市は保育所の希望を30園まで書けるようになっており(もっと多く書くことも可能)、なんとか希望順位が低い園に滑り込んだという人もいて、それぞれの指数やお住まいの立地等条件にもよりますが、希望する上位の園に必ず入れるわけでもありません。
やはり1歳児クラスは「利用保留児童数」の割合が高い
この「利用保留児童数」1,584人の年齢別の状況も出ています。
毎年同様、やはり1歳児クラスの割合が高いです。
「利用保留児童数」1,584人のうち、「育休中のうち復職意思を確認できない」が半分以上の821人いるので、821人全員でないにしても、育休延長のためにあえて落ちた人も0歳児クラス・1歳児クラスには相当数いそうです。
さいたま市の保育施設の今後は?
現時点では、今後に向けて保育施設9施設の整備が予定されています。
これにさらに小規模園が加わると思われます。
事業者を対象とした「令和6年4月開所、対象地域を指定した小規模保育事業所A型の新設整備(鉄道駅周辺での新設整備 )」の整備相談受付が予定されています。(【令和5年3月実施】令和5年度認可保育施設の整備相談を受け付けます(第1期募集)(さいたま市Webサイト))より
今までに比べれば増加数はゆるやかになっているようですね。今後令和6年4月入園に向けてまた増えるかもしれません。
報道では以下のように報じられています。
23年度は昨年度に引き続き、宅地開発が進む浦和、南区を中心に9施設、定員を727人増やす方針だ。
日本経済新聞2023年4月27日
南区では、公立園3園の2026年度末閉園が予定され、1歳児クラスが募集停止になるなどの影響もあり、2023年2月の一次利用調整では不承諾数が増加していました。今回の新設で解消されてほしいですね。
●さいたま市の保活関係記事はこちらにまとめています!
お気づきの点がありましたらコメントいただければ幸いです